住民投票(アンケートも含む)について考える 合併への努力は民意とかけ離れているか? 2004/8/26 住民の方からメールを頂いたり、「議員と女性ネットワーク委員会と語る会」でも取り上げた「住民投票や住民アンケ−ト」について、僕なりの考えを少し述べたいと思います。 その前にまず、合併の進捗状況を簡単に述べますと、 【合併協議の現況】 今月20日に塩田で第25回合併協議会が開かれ議員の定数特例、及び選挙区の取り扱いと新市建設計画などの協議を残すのみで、他のすべての協議を終了しています。 揺れている新市の名称の再協議については、首長の同意が得られていないので取り上げられていません。嬉野・谷口町長の再協議拒否の姿勢は変化ないようです。 このままの流れで行くと、すべての項目の確認ができた時点で(9月議会以降と思われる)、臨時議会が開かれ、1市3町の合併議案が提出されると思います。新市名は「湯陶里市」ということになります。 武雄市側は心のどこか片隅で「対等合併」とは思っていないのではないか、と疑いたくなる時がありますが、それがもめごとの遠因のひとつであるような気がします。 とはいえ、今、僕らがやれることは1市3町の合併をギリギリまでまとめるよう努力すること以外にないでしょう。 武雄市民に民主的なルールで決定を見た「湯陶里市」で当分、いこうではありませんか、新市民の総意を問うた上で、将来的に市名はまた考え直す余地を残していいではありませんか、固定資産税など住民負担が一番軽減されるのは、武雄市民の方々ですよ、と説得をする他ないと思います。 みんなで努力して1市3町の合併構想をまとめ上げていく・・・私が住民投票(アンケートも含む)に慎重であるのはこの延長線上にあります。 「住民アンケート」を実施した鹿島市や、「住民投票」を実施した太良町の例を持ち出すまでもありませんが、合併の是非を問う「アンケート」や「住民投票」は、一面で、話をより複雑にし、身動きを取れなくしてしまう危険性も含んでいることがわかります。 ですから、現時点での実施については私は慎重にならざるを得ません。アンケートに頼るより、議員各位の民意の汲み上げと、それに基づいた議員の判断と議会活動が求められていると思います。 【6月議会で否決された「住民アンケートを求める意見書」について】 日本共産党の西村議員と社民党の山田議員が提案者となり、保守系の太田議員、田中議員、神近議員が賛成者となって6月議会に提出され、5対14の大差で否決された「住民アンケートを求める意見書」は、「合併の賛否」を問うものである以上、住民投票の性格を帯びると考えます。 2市4町合併案で鹿島市の行ったアンケートは「住民の意思」として議会で合併反対の論拠となり、結果的に住民投票に準じた性格を帯びて、合併案が否決されたのは1年半前の事です。 ここで議員の所属党派を明記したのはイジワルでも何でもなく、政党としての国家観、地方自治観がそれぞれ明瞭であるからです。全国のこれまでの合併議案で、一人でも賛成票を投じられた共産党の議員さんをご存じでしたら教えて下さい。 原子力発電所に反対であるように、消費税に反対であるように、憲法改正や教育基本法改正に反対であるように、日本共産党さんは市町村合併に反対の基本姿勢をとっておられます。それはそれで評価する国民の声もあるのですから否定するのではありません。 【身近で見た住民アンケートと住民投票の結果】 合併に比較的消極的(あるいは反対)な首長が「民意を問う」という名分で、住民投票に判断を委ねる事例は少なくありません。近くの例では、太良町がその範疇に入るのではないでしょうか? 約350票差の反対多数で「民意」は「合併反対」と判定され、太良町長は「民意を尊重する」として合併協議離脱議案を議会に提案しました。 その離脱議案は「合併は避けて通れぬ」と判断した議会によって更に否決され(1議席差)、町長は捻れた民意の間で立ち往生する事態に至っています。 議会制民主主義において、議会の議決に政治は従わなければなりません。 また住民投票は条例で「参考にする」ではなく、「尊重する」となっているので、文字通り反対の民意も尊重しなければなりません。 議会制民主主義と直接制民主主義の結果がねじれて、衝突してしまったのです。首長は進むことも退くこともできなくなったのです。 こういう混乱と停滞は住民の利益となるのでしょうか、住民の望んだ事態であったのでしょうか? この膠着状態から脱出する方法はひとつあります。住民投票の結果と違う議決を行った議会に解散請求を起こし、新議会で採決をやり直すという方法です。 新議会で合併反対の議決がなされたら晴れて太良町は合併協議を離脱できますが、再び合併賛成と議決されたら、反対多数の住民投票の民意は無効となるのでしょうか? 条例には書いてありません。 有権者の3分の1の署名を集めて町長がリコールされ、次の立候補者が住民投票の取り扱いを争点(公約)にして戦う他ないのではないかと思います。 期限切れ(H17/3/31)寸前の、「合併をどうするのか?」という大テーマを巡って何度も選挙を行わなければならない事態も想定される訳です。 こういう混乱と税金の支出は住民の利益となるのでしょうか、住民の望んだ事態であるのでしょうか? 【住民投票を起こす時は】 私は「住民投票」に問うべき時は、民意と政治があきらかにネジレを起こした時だと思います。 つまり、住民の大多数が合併が必要と感じているのに、政治家が合併反対の方針を進めている時。→七山村がこの例です。 あるいは住民の大多数が合併すべきでないと感じているのに、政治家が合併推進の方針を進めている時。 議員活動の中で民意が合併反対に大きく傾いたと感じ、合併を進める政治とネジレ現象を肌で感じた時、その時こそ住民投票条例を設置し、住民投票を実施すべき時であると考えます。 データ編 【住民投票に関するいくつかの事例と識者の見解】 ◎沖縄県名護市の場合 1997年12月、では米軍普天間飛行場の受け入れをめぐって、公選法が適用されないために反対・賛成の両派が集票に手を尽くし、告示前から防衛施設局職員や労組員、市民団体が戸別訪問や署名運動にしのぎを削った。 投票率は82.2% まで上がり、半数をわずかに上回る52%の得票率で反対派が勝利。当時の比嘉鉄也市長は3日後「民意」とは逆の基地受け入れを表明し、辞職した。 翌年2月の市長選で比嘉氏の後継者、岸本健男氏が移設反対派の候補をわずかな差で破った。住民の間には深い亀裂を残した。 「住民投票は熱病みたいなもの。全国から反対派の支援者が集まり、市全体が異常な雰囲気に引きずられた」・・・受け入れ推進を唱えた市商工会長・荻堂盛秀氏。 ◎山口県熊毛町の場合 2002年10月、徳山市などとの合併に前向きだった山口県熊毛町議会に住民投票で「不信任」がつきつけられ解散、出直し町議選で合併推進派が多数を占め、「民意」はねじれた。 「住民投票を通じて、町民を合併問題に参加させたことは意義があった。しかし、住民投票の1票と選挙の1票は重みが違うと痛感した」・・・合併反対を唱え、住民投票を実現させた「熊毛町の針路を考える会」代表の佐々木信興氏。 ◎ 桝添要一氏(参議院議員) 「選挙は公選法の縛りを受けるが、住民投票は金で買収しようが戸別訪問しようが自由。これは重要な点で、たとえば原発の住民投票で、推進派が勝つと、反対派は『金で買収した』と文句を言うはず。厳正な選挙と、なんでもありの住民投票が同じ力を持つのはおかしい」(産経新聞のインタビューで) ◎常設型の住民投票条例を初めて制定した愛知県高浜市場合 @市の権限に属さない事項 Aもっぱら特定の市民または地域にのみ関係する事項 B長期的な検討が必要な問題や、非常に高度で専門的・技術的な問題について、「住民投票を行うことが適当でないと明らかに認められる事項」に含まれるとしている。 高浜市では平成13年に住民投票条例が施行されてから住民投票は一度も実施されていない。 「われわれは住民投票されるような議会であってはならない。使われないように襟を正さなければならない」・・・吉岡初浩(高浜市議会副議長) ◎フランスの場合 住民投票はあくまで議会制民主主義の補完手段に過ぎないとの考えから、テーマを自治体の権限の範囲内に制限するだけでなく、住民投票を参考意見と位置づけ、効果を限定的にしている。 |
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5/6/2004 「湯陶里市」決定で 抜いてはならない「撞着刀」を抜いてしまった武雄市議会 新市の名称が「湯陶里ゆとり市」に決まりました。 でも、困ったことに武雄市議会が猛反発しています。 「武雄市」とならなかったことに加え、「武雄市」阻止のために一部の委員が「湯陶里市」投票へ画策した、と感情論も噴出しているようです。ともあれ、19票対14票で「武雄市」は敗北しました。 問題は大きく二つあるように思えます。 根回し工作のあるなしにかかわらず、これまで決定を積み重ねてきた同じルールで決定したことを、ルールの遵守者であるべき議会が異議を唱え、決定変更を迫っていることです。市議会は自家撞着の迷路へ踏み出してしまいました。 もうひとつは「湯陶里市」が最適の市名であるとは多くの住民もあまり思っていないようなのです。 いわば、極めて消極的消去法で選ばれた側面が多い市名であるということです。 今、班の花見などにおじゃまして住民の皆様にご意見を聞いていますが、「武雄市でいい」という人も2割前後はおられます。「武雄市はいや」という人が2〜3割くらい、他の多くの人は「湯陶里市に決まったね」とか、「ひらがなでゆとり市の方がいいんじゃない」とか、「これでもう決定ですよね」といった、おだやかなあきらめ、みたいな感じを受けます。 僕は「葉隠市」を応募しましたが、5つに絞られて消えた時、最終的には「武雄市」も「嬉野市」も降りて、「肥前市」と「西九州市」の決戦になると思っていましたが、見事に外れました。まさか、「湯陶里市」になるとは想像してしていませんでした。 が、ルールで決まったことには従わざるを得ないと思います。 武雄市民にしてみれば、市名が消えるのですから喪失感、抵抗感は大きいものがあるだろうとは想像できます。 ならば早い段階から「武雄市」に固執し、その代わりに市庁舎の位置とか他の事項で譲歩したり、トップは水面下の交渉をするべきだったのではないかとも思います。褒められた方法ではありませんが、そういった政治手腕も求められる大事業なのです。 今後、どうなるのか?予断を許しません。 武雄市議会が抜いてはならない「刀」を抜いてしまった。 要求が通って万一、「武雄市」が復活したら、反対派の一部議員は猛然と反旗を翻すでしょう。「武雄のゴリ押し!ルール破り!」、という非難には反論するのが難しい面がありあます。合併反対派にとってはこの上なく好都合の状況になりつつあると言えそうです。 また武雄市議会の一部では枠組みを壊して山内、北方あたりとやりなおせばいい、と腹を決めているかもしれません。 さて今、すべきことは、何か。 「ルールを守ろう」、「当面は湯陶里市で行くが、将来的な課題として再考することなどを協議しようではないか」、と武雄市議会を合併協の会長である古庄市長が市議会説得へ動くことではないでしょうか。 今後、難しい局面への備えと、万一枠組みが破綻し、最悪の結果が生じた場合への対応も検討していかなければならないのではないかと思います。 |
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第3回合併対策特別委員会レポート 合併して固定資産税は上がるか、下がるか? 1/20/2004 池田栄一 |
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3回目の合併対策特別委員会はしんしんと足下から冷える1月19日の午後1時から4時まで開かれた。全員出席、町長、助役、及び民間選出の熊森、江口、片岡の各委員も傍聴出席という盛会ぶりだ。 メーンのテーマは固定資産税を税率をどこに会わせるか・・武雄市が課税標準の1.55%で嬉野、塩田、山内は1.4%である。 武雄が他町並みに引き下げれば現武雄市民にとっては減税となり、3町は現状維持のように見える。 しかしその場合、明らかなのは新市においての税収は武雄市の分が確実に減収となる。固定資産税は景気に左右されない唯一の基幹税である。しかも課税標準そのものの見直しがなされ、土地価格の評価も確実に下がり続けていて、5年ごとの評価替えの度に固定資産税は下がっている。 従って、税率が1.55%に引き上げられても住民の実質負担は増えないという試算が実態に近いのではないか。 課税標準+土地評価の変動+税率という3本の指標をクロスさせていかなければ適正な「固定資産税」を論ずることにはならない。 固定資産税が減れば助かるし、嬉しい。けれども、その分の税収をどこに求めるかが解決されなければ自治体は行政サービスを低下させざるを得ない。 一方で、税金を一括して前納した人に支払われる「前納報奨金」が復活される方向だ。武雄市、山内町ではこの制度が継続されていて、廃止していた嬉野、塩田町が復活するわけだ。上限を10万円として、納税額の1000分の3程度が支払われる。 本町で過去に廃止した時に前納率が半減した経緯があり、徴収率UPに繋がると見込まれている。 不思議なのは税率の0.15%UPには「だから合併反対!」と唱える共産党西村議員が、納税者にわずかながらも恩恵となる「納税報奨金」には、「分納者への差別であり、痛みを与える」という変テコな論理で反対するのだから理解できない。 いつも言うことだが、合併を模索していかなければ、現状のサービス維持は不可能で、しかも段階的な継続的な増税を覚悟する必要があるのである。 耳には心地よいけれども「木を見て森を見ない」類の議論には住民の方々も注意をして聞いていただきたい |
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合併対策特別委員会は白熱乱舞・・傍聴のススメ 第1回 合併対策特別委員会レポート 平成14年12月10日 |
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町議会の合併対策特別委員会は各常任委員会から選出された9名の委員と正副議長で構成され、法定合併協議会の前日に次の討議事項の全項目をつぶさに精査、各自の意見を戦わせる中身の濃い、本音の討議の場である。 委員会の顔ぶれは山口二郎(議長)、大串哲郎(副議長)、山口要(文教委員長)、辻政俊(総務委員長)、池田栄一(産業委員長)、山田伊佐男、山口富男、山口栄一、太田重喜、西村政三、田中政司でこの委員会から議長と山口要委員長の二人が法定協委員として出て行く。 つまり嬉野町議会のけんけんガクガクの議論の雰囲気を背負って出て行くので自ずと発言に厚みも増し、また制限も生まれてくるだろう。 1月の臨時議会で議決で正式に合併協案反対を表明したのが西村、山田、太田の3委員、残りは賛成派だが温度差はあり、反対に近いとおぼしき委員もいる。 協議事項は徐々に各論に踏み込み始めたために紛糾しないことの方が珍しい。なにしろ各自治体それぞれに程度の差こそあれ難問を抱えており、協議会を、合併構想を壊す材料にはこと欠かないからだ。 例えば、武雄市は保養村は年間千数百万円の赤字をなんとかしろ、土地開発公社の借入金26億を合併年度迄に精算しておくべきだ、といった調子でマイナス要因は浜の真砂ほどもある。 一方、まとめ上げる努力を、と訴えるにもプラスの現実的な数字としては巨額の特例債(厚く優遇された借金)くらいしかなく、超高齢化、少子化、人口減社会、税収減、交付税減といった実感として市民、町民に伝わりにくいことばかりだから分が悪い。 けれども政治家に必要とされているのは未来を見通す眼力ではないのか?保育料も給食費も公営家賃も道路の補修も、合併しなければ今の水準が保たれると考える方がノンキというものである。 地方自治体が議会を含めて自らの構造改革に取り組み、マンパワーも含めた行政能力の向上を図らなければ、例えここ数年は何とかしのいでも、子ども達に明るい未来はない。 現在の日本にすべての地方自治体の面倒を見る力は既にない。最後の力を振り絞っての「合併特例法」であると認識すべきである。 いかに全国町村長会や議長会で「地方交付税制度の堅持」を決議しても、国に対して国家を崩壊させてまで地方に仕送りせよ、とは無理な相談であることを多くの国民は自覚しつつあるのである。 |